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coffee cup 第79話

第77話
第78話

 

世界は黒一色だった。
濡れた木の感触はこの世に存在しない生物の固い皮膚の様。
私は黒い闇に紛れた群れの中にいた。
その群れの一匹に私は寄りかかり、座っていた。
私はただ、黒一色に染まった世界にいた。
激しさを増した雨は私を貫いた。
服は鉛のように重く、捉えているはずの地面は見つけることができない。
それでも私はここにいた。
目的も理由も意味もここには存在しない。
私が呼吸し、雨が降り、深い闇がそれらを包んでいた。
それだけのこと。


雨。
暗闇。
木。
地面。
そして私。
それらが描かれた絵画が飾られていた。
鑑賞する者は誰もいない。
私達はここで、誰かが来るのを待った。
私を助ける誰かでも、私を捕まえる誰かでも、私達はどちらでもよかった。
目的も理由も意味もなく、私達はそんな誰かを待った。


目的はここにはない。
私の持っていた目的もない。
意味も理由もない。
本当の私を取り戻すことも、私を助けることもここにはない。
空っぽの立体が並び、雨が降り、深い闇がそれらを包んでいた。
それだけのこと。


黒一色の絵画が一枚。
それは絵画と呼べるものなのかはわからない。
確かに描かれてはいるのだが、黒いだけのそれから黒以外の何かを見つけることはできない。
特定されないどこかに、それは飾られていた。
美術館でも、家でもなく、どこかに飾られていた。
黒いだけの絵画の中で、私はその一部であり続けた。
鑑賞する者は誰もいない。


時間はここにはない。
あってはならない。
絵画は止まっていなくてはならない。
そうでなくても、私も木々も動くことができない。
私が呼吸し、雨音が降り積もり、深い闇がそれらを包んでいた。
それだけのこと。


私達以外の誰かがやってきた。
鑑賞する者。
誰かはわからない。
その誰かはここにはない目的と理由と意味を持っていた。
そうでなくてはここには来ないし、辿り着けない。
もう私達は待つことはない。
鑑賞する者がここにいた。



光はここにはない。
何かを見るための光も、私のこれからを照らす光もない。
私が呼吸し、雨が降り、深い闇があいつらの一人を照らしていた。
それだけのこと。



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